コラム

トマト銀行事件

係属機関・判決日

  • 岡山地方裁判所
  • 平成24年4月19日

訴訟内容

トマト銀行(岡山市)の50歳代元行員が、上司からの執拗なパワーハラスメントによって退職を余儀なくされたとして、同行と元上司3人に計約4,800万円の損害賠償を請求した事件。

事件の背景

  • 原告は平成18年から平成19年にかけて、ミスによって当時の支店長代理から「辞めてしまえ。あほじゃねんかな、もう普通じゃねえわ」などと執拗な叱責を受けた。
  • 原告は、上司からのパワーハラスメントを受ける直前まで脊髄の病気で療養していた。
  • 平成21年3月、原告は抑うつ状態になり退職した。 

判決

原告の一部勝訴。
支店長代理の叱責は、原告に精神的苦痛を与えるものでパワーハラスメントに該当し、同行にも使用者責任があると認定し、同行と支店長代理に慰謝料等110万円の支払いを命じた。
しかし、退職との因果関係は認めず、働いていれば得られたはずの逸失利益や残る2人の元上司に対する請求は却下された。

コメント

かつては、パワーハラスメント等の心理的負荷による精神障害を発症しても、労災認定されるケースは稀であった。しかし、近年では、うつ病に代表される精神障害の労災請求及び認定件数は増加の一途を辿り、さらに、平成23年12月の精神障害の労災認定基準の改正により、精神障害の基準である長時間労働の具体的な時間外労働時間(発症直前1ヶ月160時間等)が策定され、また、心理的負荷の評価期間については、いじめ・パワハラやセクシュアルハラスメントが長期間継続する場合は、従来は発病前概ね6ヶ月以内のみが評価対象であったが、その全ての期間について評価されることとなる等、様々な要件が明確化された。
この改正により、パワーハラスメントを理由とする精神障害の労災認定件数のさらなる増加が見込まれるが、同時に事業主の安全配慮義務も問われることとなり、民事訴訟に発展してしまうリスクの増加も予見される。企業は重要なリスクマネジメントとして、教育研修の実施や相談窓口の設置等、パワーハラスメントの撲滅に向けて、早急に体制を構築せねばなるまい。