コラム

龍谷大学助手雇い止め事件

係属機関・判決日

  • 京都地方裁判所
  • 平成23年12月22日


訴訟内容

3年の期限付きで龍谷大学(京都市)で経済学部助手を務めていた原告が、1回目の契約更新時に雇い止めを通告されたことに対し、少なくとも1回は更新されるはずであったと主張し、同大学を相手取り、労働契約上の地位確認及び雇い止め以降の未払い賃金を請求した事件。


事件の背景

  • 原告は、平成19年4月に3年の契約期間で採用された。
  • 原告の雇用形態は3年の有期雇用だが、募集要項には「教授会が認める場合に1回に限り更新することがある」とあり、内規にも「更新することができる」と明記されていた。
  • 原告が採用される以前に同様の形態で勤務していた者について、契約更新がなされた実績が多数あった。
  • 原告の採用時に人事審査委員長を務めていた教授から「よほどのことをしない限り、少なくとも1回は更新される。」との説明があった。
  • 原告は、同大学経済学部の専任助手としてフィールドワーク科目の支援のためのサービスラーニングセンター(以下SLC)という機関の運営・サポート業務及び研究活動に従事しており、恒常的な業務であったといえる。
  • 当時の経済学部教務主任は、平成21年6月、原告に対し、平成22年3月末日をもって雇い止めする旨を通告した。
  • 原告は、雇い止めの撤回を求めて、同大学教職員組合を通じて申し入れや団体交渉を行った。
  • 大学側は、交渉過程において、雇い止めの理由について、「SLCは機能不全の状況にあり、事業を全面的に見直すこととした」等として原告の雇用継続を拒否し、そのまま平成22年3月末日を迎え、原告は雇い止めされたため、同年7月5日、京都地裁に提訴した。


結果

同大学が平成24年4月1日から新たに1年間雇用するという内容で和解が成立。
助走期間として、平成24年1月から同年3月末までの期間についても、同大学で臨時雇用されることとなった。
雇い止め以降の未払い賃金の支払いはなし。


コメント

有期雇用契約の雇い止めについて争われた裁判例では、民法の原則通り契約期間の満了によって当然に契約関係が満了するものと判断した事例ばかりではなく、一定の制約を加え、解雇権濫用の法理が類推適用される場合がある。
雇い止めの判断可否については、従事する業務の内容の恒常性・臨時性、継続雇用を期待させる当事者の言動・認識の有無・程度等、契約更新の状況、同様の地位にある他の労働者の雇い止めの有無等を総合的に勘案して判断される。
なお、本来は、更新回数が少なければ少ないほど雇い止めは認められやすいが、本件は、1回目の更新時期であるにもかかわらず、雇い止めが認められなかった。これは、非常に稀なケースであるが、上記の記載にもあるように、教授の説明等からも、少なくとも1回は契約が更新されるだろうと期待させてしまった言動が決め手となり、労働者側に有利な判断がなされたものと考えられる。
近年、多くの大学で「高学歴ワーキングプア」と呼ばれる任期付や非常勤の採用が増加し、研究者の雇い止めによる退職も増加しているという実態があるが、そのほとんどが次の再就職を案じて雇い止めを容認しているという。本件における和解という結果と原告の活動は、少なからず雇い止めの抑制を助長させるであろう。
また、最近発表された厚生労働省の方針によると、有期雇用期間に上限を設け、無期雇用へ転換させるという動きも見られているように、今後、さらに雇い止めの規制が厳しくなる可能性は十分に有り、企業としては、雇い止めのルールをきちんと整備しておくことはもちろんのこと、正社員化の方向性も視野に入れておく必要がある。