コラム

エーディーディー事件

係属機関・判決日

  • 京都地方裁判所
  • 平成23年10月31日


訴訟内容

コンピューター会社「エーディーディー」(京都市)でシステムエンジニアとして勤務していた元従業員が、実際は裁量外の労働をしていたとして、残業代等を請求した事件。請求金額は約1,600万円であった。労働の実態が裁量労働に該当するか否かが争点となった。


事件の背景

  • 平成14年頃から正社員として勤務。
  • 会社は、8時間のみなし労動時間を採用していた。
  • 原告の業務内容は、システムエンジニア本来の業務の他、プログラミングや営業活動も行っていた。
  • タイトな納期やノルマが設定されているという業務実態があった。
  • 平成21年 2月 うつ病と診断された(労災認定)。
  • 平成21年 3月 退職。
  • 退職前の約5ヶ月間は、毎月約80~140時間の残業があった。


判決

 原告の勝訴。会社に約1,140万円の支払い命令。 
 【支払内訳】
 未払残業代(平成19年7月分~平成21年2月分): 約570万円
 付加金(休日手当・深夜手当等の未払分): 約570万円


コメント

本件は、原告の労働の実態が裁量労働に該当するか否かが争われたものであるが、裁判所は、プログラミングや営業の業務は裁量労働の要件を満たしていないと判断した。
また、タイトな納期の設定やノルマを課していたこと等の拘束性の強い具体的な業務指示があったこと、健康確保を図るための措置も採らずに過労死認定の基準を超える労働を強いていたこと等、専門業務型裁量労働制を否定している実態があったことも、今般の判決結果の一因と考えられる。
因みに、専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を労働者の裁量に委ねる必要がある業務として法令で定める19業務(情報処理システムの分析又は設計の業務、衣服・広告等の新たなデザイン考案の業務、弁護士の業務、公認会計士の業務、税理士の業務等)について、対象となる業務を労使で決定し、労使協定であらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度である。
加えて、対象19業務であっても、実態として他の業務に就いている場合は、裁量労働とみなされない。例えば、衣服・広告等の新たなデザイン考案の業務であっても、既に考案されたデザインに基づく単なる図面の作成や製品の制作等の業務は含まれず、本件のように、本来は情報処理システムの分析又は設計の業務であってもプログラミングの業務は含まれない。なお、対象19業務でも、上司の具体的な指揮命令を受ける等、独創的に業務を遂行できない労働者は対象とならない。
残業代の節約のために裁量労働制を導入する企業もあるようだが、今後は採用要件が厳しくなることも考えられるため、職種や実態等を精査し、実態に沿った労動時間を協定することが重要であり、一層厳格に運用する必要があるであろう。