コラム

SHOP99名ばかり管理職事件

係属機関・判決日

  • 東京地方裁判所立川支部
  • 平成23年5月31日

訴訟内容

コンビニエンスストア「SHOP99」の元店長が未払い残業代を請求した事件。なお、請求金額は、過重労働によるうつ病罹患に対する慰謝料も含め、約450万円に及んだ。因みに残業代の未払いは、権限や裁量を与えられていないにもかかわらず、原告が「管理監督者」としての取り扱いを受けていたことによるものである。

【請求内訳】

未払残業代相当額:約75万円(店長在位の約4ヶ月間)

付加金:約75万円

病気休職等に対する慰謝料:300万円

事件の背景

  • 原告は、学卒後、8年のフリーター生活を経て、2006年9月に正社員として入社
  • 原告は、2006年12月、入社後わずか3ヶ月で実質店長の立場に置かれ、2007年6月、入社後わずか9ヶ月で正式な店長に就任
  • 社内的には「管理監督者」扱いだが、次の「管理監督者の3要件」はいずれも満たしていない。
  1. 経営方針など経営に関する重要事項の決定に参画する権限を有していること、または、正社員の労務管理に関する指揮監督権限を有していること(例えば、アルバイトだけでなく正社員の採用権限や最終人事評価決定権限等を有していることなど)。
  2. 労務管理上の勤務態様からみて、自己の勤務について自由裁量権限があり、出勤、退出について就業規則上および実態上厳格な制限を受けない地位にあること(いわゆる重役出勤的なものでなく、勤怠成績として評価されず自主性が承認されていること)。
  3. 賃金・賞与・退職金などがその地位にふさわしい待遇であること(例えば、残業代支給対象の一般社員と賃金(年収)の逆転現象がないことなど)。
  • 人手不足により原告は恒常的な長時間労働を強いられていた。因みに最長37日間無休、また、4日間合計で80時間の労働を行なったこともあった。
  • 原告は、2007年10月、長時間労働が原因と思われる「うつ病」を発症し、休職に入る。

判決

原告の完全勝訴。被告には約165万円の支払い命令。

【支払内訳】

未払残業代(遅延利息含む):約45万円

付加金(残業代が未払いだったことに対するペナルティ):20万円

慰謝料:100万円

コメント

いわゆる「マクドナルド事件」判決同様、多店舗展開事業における店長の管理監督者性が否認された判決である。そして、法律に規定はあるものの今まで実績が皆無であったと言える、未払い残業代についての罰則である「付加金」の支払い命令が出されたことは、事態の深刻さを物語っている。

一概に管理監督者と言っても、企業規模の違いや管理する組織の大きさに応じて、業務内容や権限には相当の開きがあり、管理監督者性の判断は簡単にできるものではない。ただし、管理監督者か否かよりも、まず問題とすべきは1日8時間、週40時間という法定労働時間を大きく超える長時間労働が蔓延している現実かもしれない。

そして、精神疾患の原因が過重労働にあったことが認められたことも、今後に非常に大きな影響力を持つ判決となったことは間違いない。

少子高齢化社会の進展により、将来の労働力人口の確保が喫緊の問題となっている我が国において、労働基準監督署による行政指導が長時間労働による健康障害防止にシフトしてきているのは当然のことと言える。今般の判決も踏まえ、長時間労働が恒常化している企業については、従業員の労働時間管理と健康管理について、早急に改善を迫られることになるであろう。